SS・お話

childhood fear

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生まれたときから、ろくでもない人生なのはわかりきっていたのに、どうして生きたいなどとと思ったのだろう。偽りの目的に縋ってまで。

「千年以上も生きてきたのに、あの時なぜか、まだ死ねないって思ったんだよね。不思議だよね。」

隣に寝そべる男が笑う。
その腕は、かつての姿とは比べ物にならないほど細く頼りない。か弱い人間の姿に身をやつしても妖狐が生きたいと思った理由はなんだったのか。

「今ならいつ死んでもいいと思うのに。」

包帯が巻かれた手に絡まる長くて細い指。肩から滑り落ちた長い髪が顔に降りかかる。花の香り。温かく柔らかな唇。

「嘘を、つくな。」

熱を孕んだ吐息の合間に零した言葉に、人間の面を被った狐が笑う。

「あぁ。嘘だよ。やっと手に入れたんだ。手放せるわけないだろ?」

耳に吹きかかる熱い息。低く鼓膜を犯す声。

「…愛してる。」

肩を掴んだ指が肉にくい込む。
細く長い首にしがみついて爪をたてた。

あの頃は何も無かった。
ただ喉が渇いて、何を求めているのかもわからずに手を伸ばしていた。

「愛してる…愛してる…」

手に入れたら満ち足りるはずだったのに。
それでもまだ、心も体も、もっともっとと願う。
浅ましく醜い臆病なケモノ。

いつからこうなった?
死んでもいいと思っていたはずなのに。

血にまみれた手を伸ばす。
絡められた指と視線に臆病心が頭をもたげる。

もっと一緒に生きたいと。
願うなんて。

自分の中に感じる他人の体温。肌から伝わる脈動。首筋にかかる息づかい。
それでも確かなものが欲しくて、確認するように掴まれた手を、もう一度強く握り返した。


Fin.




ツイッターで幼少期の飛影のことが話題になっていて触発されて。


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