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SS・お話

Stand by me

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※他CP要素があります。





「好きなのを食べていいよ。」

言われて飛影は机の上に視線を落とした。
ひっくり返した紙袋から無造作に落とされたのは、包装紙に綺麗に包まれ、金や銀の煌びやかなリボンが掛けられた色とりどりの箱。

「またか。」

飛影はさも興味がないといった体で目を細めてそれを見下ろした。
毎年ニ月のこの時期になると、蔵馬はどっさりとチョコレートの箱を抱えて帰ってくる。
始めは面食らったが、毎年同じ光景を見せられて、飛影もすっかりこの人間界のおかしな風習に慣れたものだ。ところが貰った当の本人は全く興味がなく見向きもしない。うず高く積まれたのチョコレートの山を片付けるのは、もっぱら飛影の役割になっていた。
今も、蔵馬はチョコレートには一切手をつけずに、テーブルの向いで優雅に紅茶をすすっている。

「だって貴方以外から貰ったものには価値がないですから。」

悪びれも恥ずかしげもなく平然と言ってのける蔵馬の態度に、飛影は何とも言えない気持ちになって眉根を寄せた。

それぞれ想いがあって贈ったものだろうに、その正体がこんな性悪男とは。憐れな女共だ。
とはいえ、その女共に遠慮する義理もない。

飛影は箱の山の中から、薄水色のリボンのかかった白い箱を手に取った。リボンを外すと、箱の中にはいかにも高級そうな華奢なチョコが並ぶ。雪の結晶を模したホワイトチョコがあしらわれた一粒を手に取って口に放り込む。まろやかな甘さが口の中に広がった。

「ところで、飛影からオレにはチョコはないんですか?」
「なんで俺が貴様に菓子をやらなきゃならん。わざわざ来てやっただけで十分だろう。」

飛影の言葉に、蔵馬は目を見開いた。そして何やら嬉しそうに笑いを浮かべている蔵馬を尻目に、飛影はまた一粒チョコレートを手に取った。口当たりの良いミルクチョコレートが舌の上で溶けていく。蔵馬の淹れた甘いミルクティーでチョコの甘さを喉に流し込みながら、飛影は次の獲物を選ぼうとして、箱の山の中のある一つに目が止まった。
ピンクや赤のかわいらしい包装が多い中で、何の飾りもない真っ黒の箱に目を見張るような赤いリボンのその箱は、異彩を放っていた。
チラリと蔵馬に視線を走らせる。
蔵馬が紅茶を淹れ直しにキッチンに立った隙に、飛影はすばやく黒い箱をコートのポケットに突っ込んだ。

「そのチョコ美味しそうだね。」

戻ってきた蔵馬は飛影の脇に立つと、あらかた食べられてしまった箱の中を覗き込んだ。

「オレもひとつ欲しいな。」
「どうせまだ沢山あるんだ。好きなものを食えばいい。」

テーブルの上の未開封の箱の山を顎で指しながら、飛影は最後の一粒を口の中に放り込んだ。

「それが欲しいんだよ。」

低い吐息混じりの声と共に、ぐいと襟元を掴まれる。次の瞬間、口の中に侵入してきた蔵馬の舌に、今しがた放り込んだばかりのチョコレートを奪われた。取り返そうと伸ばした舌は逆に絡め取られ、溶けたチョコとせめぎ合う舌が耳障りな水音をたてる。口から直接肺に送り込まれた芳醇なチョコレートの香りに胸がむせて、飛影は蔵馬を力任せに押し戻した。

「ほのっ…へろひつねがっ…!」

舌を囚われた飛影の口の端から、チョコと唾液の混ざった涎が顎へと垂れる。それを舌で舐めとって、蔵馬はお互いの鼻がつくほどの距離で飛影と目を合わせた。チョコレート味の吐息が鼻の奥をくすぐる。

「エロ狐でもなんでもいいよ。貴方がそばにいてくれるなら。」

チョコレートよりも甘い声で囁かれて、再び口を塞がれた。コートの裾から侵入した手が服の中をまさぐる。

「は…アッ…くら…」

キスの隙間から漏れた声が上ずる。咥内を這う舌と、肌をなぞる指先に、体が溶け落ちそうになって、飛影は蔵馬のシャツをしっかりと握りしめた。


***


「おい。」

なんの前置きもなく放り投げられた小さな箱を片手で受け取って、躯は人間界から戻って来たばかりの無愛想な部下を視線だけで見遣った。

「貴様にやる。」
「お前が土産とは珍しいな。」
「また人間界のくだらん祭りだ。」

真っ黒な箱に真っ赤なリボン。裏返してみたりリボンをつまんでみたり。小さな箱を手の上でしげしげと眺めながら、躯は不敵に飛影に笑いかける。

「ほう。祭りということは、この贈り物にも何か意味があるんじゃないのか?狐は知ってるのか?」
「…さあな。」

飛影は、少しムッとした様子で視線を逸らす。

「好きなものを食べていいと言われて押し付けられたんだ。あとはどうしようと俺の勝手だ。いらないなら捨てればいい。」
「いや、ありがたくいただくさ。」

真紅のリボンを解き、黒い箱のフタを開けた躯は、フッと鼻で笑った。
箱の中には、それを持ってきた小生意気な子供のような部下には全く不似合いな、目を見張るような真っ赤なハート型のチョコレートが四つ、瀟洒に収まっている。

箱の中身までは確認しなかったんだな。

笑いがこみ上げて来るのを押さえながら、躯が飛影をチラリと見ると、興味がないような体でいて、しっかりと横目でこちらの反応を伺っている。
わざとらしく、ゆっくりと一つ手に取って口の中に放り投げる。ほろ苦さと共に中に入った果汁の甘酸っぱさが口の中に染みていく。

「うまいな。」
「そうか。用はそれだけだ。」
「おい、飛影。」

躯がチョコレートを気に入ったらしいことを確認するやいなや、くるりと踵を返して扉へ向かおうとした飛影だったが、背中に掛けられた命令口調の声にピタリと動きを止めた。

「今日はここでオレと寝ろ。」

驚きと、困惑、そして明らかな拒絶をまざまざと顔に出して、飛影はゆっくりと振り向いた。

「冗談は大概にしろ…!」
「おいおい、勘違いするなよ。オレは隣で寝ろと言っているだけだ。オレもむざむざと狐に殺されたくはないからな。」

そう言ってクックッと躯に笑われ、一瞬にして飛影の顔が羞恥に染まる。
即座にコートを乱暴に脱ぎ捨てると、躯が横たわる巨大なソファのような寝床に土足のまま上がり込み、ボスンと音をたててシーツに倒れ込んだ。

「これで満足か?」
「もっと近くに来い。」

飛影は顔をしかめたが、この百足で女王の命令は絶対だ。拒否したところで、力では勝ち目もない。しぶしぶ這い寄って来た飛影の腕を乱暴に引っ張り、躯は飛影の体を強引に自分に抱き寄せた。

飛影の頭を胸に抱くようにすると、ツンツンと跳ねた黒髪が鼻のあたりをくすぐる。きちんとシャンプーされたらしいそれは見た目とは違って柔らかく、微かに花の香りが薫る。

「お前は随分と狐とよろしくやっているらしいな。そんなにあの狐がいいか?」
「…何が言いたい。」

頭を抱きかかえられたまま、飛影は上目遣いに躯を睨む。

「たまにはオンナの体もどうだ?」

そう言って躯は飛影をさらに抱き寄せる。無理矢理に顔を胸に押し付けられ、鼻を押し潰された状態で、飛影は表情も変えずに短く息を吐いた。

「なんとも思わん。それに貴様こそ、俺のことをオトコだなんぞこれっぽっちも思ってないだろう。」
「それもそうだな。」

声を出して笑いながら、じゃあコイツはオレにとって何なんだろうと躯は思う。

恋人とは違う。友人でもない。ただの部下というわけでもない。 息子、弟。どれも当てはまるようで当てはまらない。でなければペットか…

そこまで考えて、猫耳のついた飛影の姿を想像して、自分の考えが可笑しくて躯はまた吹き出した。

「何がおかしい?」

最高に不愉快だと飛影の表情が語る。

「やってられん。俺は自分の部屋で寝る。」
「まあ待て。」

立ち上がりかけた腕を掴まれ、飛影は再びシーツの上へと引き戻される。

「最近誰かさんが人間界にばかり行っているせいで、退屈してるんだ。たまにはオレにもつきあえ。」

そう耳元で囁かれて、飛影は小さく舌打ちする。しかし観念したらしく、再び大人しく躯の隣に収まると、目を閉じた。

命令とはいえ、こいつはよくオレに付き合ってくれる。

躯は自分の腕に抱かれている男の白い肌を、手の甲でそっと撫でた。その胸元で、二つの石が淡く光を放つ。


それは征服した数多ある小国からの貢ぎ物に過ぎなかった。
見ていると心が落ち着く。不思議な力を持つ石。石に染み付いた妖気が、なぜか心地よかった。この妖気の持ち主に会いたい。なんともなしにそんなことを思うようになった。

その時は思ったよりも早く訪れた。人間界から突如として現れたA級以上の力を持つ変わった一団。その中に、嗅ぎなれた妖気があった。
実際に会ってみたその妖怪は、思っていた通りの男だった。憎しみだけで強くなり、生きる目的を失ったまま、戦うためだけに生きていた。それはかつての自分と同じだった。

だが、荒涼とした果てしない雪原と思われた心の奥底に、この男は仄かな光の灯る場所を持っていた。

信頼を寄せてくれたもの。
情をくれたもの。
守りたいもの。
そばにいたいもの。

それらがまるで宝物のように、幾重にも錠のされた記憶の中に、大切に大切にしまいこまれていた。
それが羨ましいと思った。


オレの記憶を見せた後、目を覚ました飛影は、「くだらんものを見せやがって。」と毒づいた。そして同情するでも憐れむでも見下すでもなく、たった一言「しばらくは貴様のそばにいてやる。」とオレに告げた。

それ以来、飛影はオレのそばにいる。恐れも畏れも抱かずにオレに接してきたのはコイツが初めてだった。クソ生意気にオレに意見をして、たてついて。何度ブチのめしても、軍を解散しても、人間界に通うようになっても飛影はオレの元に帰ってきた。

「飛影」
「…なんだ?」

腕の中からくぐもった声が答える。本気で眠くなっているらしい。

「ここを出て狐のところに行ってもいいんだぜ。」

暫しの沈黙が流れる。腕の中の飛影は微動だにしない。

「お前、オレに記憶を見られたことを後悔しているか?」
「…今更そんなことを聞いてなんになる?」
「オレに弱みを握られたとでも思ってるんじゃないのか?」

再びの沈黙。

「人の頭の中にズカズカと入ってきておいて…ほとほと勝手なやつだ。」

ややたってから飛影は吐き捨てるように呟くと、躯の腕を押しのけるようにして顔を上げた。先ほどのチョコレートに似た赤い瞳が射るように見上げる。

「勘違いするな。俺がここにいるのは、弱みを握られたからじゃない。俺の意思だ。出ていきたくなったらいつでも出ていってやる。」

躯は生意気な赤い瞳を覗き込んだ。
コイツは、ただ真っ直ぐにオレを見る。世辞も建前もない。
血の色の瞳の中に映る“ただの躯”が、己を見つめ返す。

「それに…俺はお前に記憶を見られたことを後悔などしていない。どうせロクな記憶じゃない。俺自身、もうとうに忘れた記憶だ。」

ほんの一瞬、視線が宙を掠める。
嘘をつけない目。半分嘘で半分本当の言葉。
ふっと躯の表情が緩む。

「そうか。オレもだ。飛影。」

唐突に、躯に微笑みかけられて、飛影は戸惑ったように視線をさまよわせると、再び猫のように体を丸めてしまった。
躯が手を伸ばして跳ねた髪に触れると、もそりと飛影の肩が動く。

「安心しろ。しばらくはここにいてやる。」

そう言って再び伏せてしまった飛影に、躯は自分の内側にクツクツと込み上げる笑いを必死で噛み殺した。

安心しろ…か。

コイツは…たかだか十数年しか生きていないガキのくせに。オレに安心しろという。しかもオレの腕にに抱かれているこの状況で。さも偉そうに。自分を棚にあげて。

まったく馬鹿なヤツだ。

躯は自分の枕元に置いたままだったチョコレートの小箱を手に取りフタを開けた。フタの裏側には、端正な文字で書かれたメモが貼り付けてある。

“拝啓 躯殿
日ごろ彼がお世話になっています。
これは彼が自分で選んだものです。彼の行動と、日頃のお気遣いに免じて、今晩は一晩だけ彼をお貸しします。ですが、二度目以降は容赦しませんので、悪しからず。”

胸元から、くぅくぅと何も知らない寝息が聞こえてくる。寝入った飛影は、赤ん坊のように体温が高くて腕が暑い。

ガキが…無防備な顔して寝やがって。

躯は飛影の頭をぐいと引き寄せた。
恋人でも友人でも家族でもない。けれど、自分に寄り添って眠るこの存在の体温は妙に心地よい。
フタ裏の手紙は、さらに続く。

“そしてどうか、これからも彼が望む限り、彼のそばにいてやってください。”

出来すぎた“宿敵”からのメッセージを鼻で笑って、躯は真っ赤なハートをもう一粒口に放り込んだ。
舌の上でじんわり溶けたチョコレートの味は、さっきよりもずっと甘く感じた。


Fin.

2017 バレンタインUP

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