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幽白戯言

?飛小話

 ←2周年でした(笑) →蔵飛アンソロジーに参加します!
先月全くお話をUPできず、2年目記念話も落としてしまい、バレンタインも何もできないので、以前に書いたネタをUPしてみました。
でも蔵飛じゃなくてゴメンナサイ。一応蔵飛前提なんですけれど。
微妙に他カップル要素があるのでご注意ください。微エロです。

以前UPした「白昼夢(黒)」の続きになります。

本編追記にて↓




続きを読む・・・


 目の前の光景に時雨は心中、溜息をついた。
 
手足に巻かれた包帯の他は、一糸纏わず寝台に横たわる白い裸体。鍛えられ、大理石彫刻のように均整の取れた筋肉。陶磁器のように滑らかな素肌。
それが惜しげも無く晒され、好きしてくれと言わんばかりに無防備に横たわっている。
 
それだけならいい。だが、時雨を萎えさせたのは、その体の発する匂いだった。
つい先ほどまで情を交わしていた者の放つ官能的で気怠く淫靡な匂い。
愛された濃密な時を物語るように、身体中から香る胸やけしそう甘っだるい色香。
それを隠そうともせず、むしろ開けっ広げに誇示するかのような横柄な“患者”の態度に、時雨は顔をしかめると、いつもよりも強く香を焚いた。
幽遠な香りが部屋に充満していく。
 
「おい、早くしろ。」
 
痺れを切らした“患者”がうつ伏せになったまま上半身を起こして時雨を呼ぶ。
その人を見下したような赤い眼に、時雨は再び心中で溜息をつく。
 
「そう急くな。力を抜いて足を開け。」
 
寝台の上の両足が素直に肩幅に開かれる。時雨は寝台のすぐ脇に立って、改めてその身体を至近距離で眺めた。
小さな背中には愛された証が点々赤く残り、足首の包帯の解けかけた部分には、薄っすらと何かで縛られた跡。軽く開かれた股の間からは、まだ行為の生々しさが色濃く残る秘部がのぞく。だらしなく開いたまま赤く腫れているそこをチラリと見て、時雨はすぐに目を逸らすと、秘部を隠すように小さな薄布を掛けてやった。
 
「飛影、少しは自重出来んのか。」
「余計な世話だ。さっさとやれ。」
 
そう言うと飛影は重ねた腕の上に顎を乗せて目を閉じた。
今度は心中ではなく実際に小さく息を吐くと、時雨は滑らかな白い肌に手のひらを這わせた。
 
 
身体の線に沿って、剣ダコの目立つ時雨の無骨な指が肌をなぞる。時折強く押したりしながら、ポイントポイントに、慣れた手つきで細い鍼を刺していく。
直接筋肉を刺激され、刺された周辺の筋肉がピクピクと痙攣する。飛影は目を瞑ったまま、時折ふっと鼻から息を吐き出した。
 
身体を触れば筋肉の流れでどこが悪いか大体分かる。飛影の場合は、腰と臀部。そしてその奥…
 
既に腰には数本の鍼が打たれている。
一体どれほど酷使しているのかと、トントンと鍼の先を指先で軽く叩きながら時雨は思う。
 
一度、ヨロヨロの状態で人間界から帰ってきたのを見かねて治療をしてやって以来、飛影は人間界から帰って来ると決まって時雨の治療を受けに来るようになった。
体の状態を見れば、まともな愛され方をされていないのは一目瞭然だった。
当初はあのしつこい狐に執拗に迫られてのことかと思い、飛影に対して若干の憐れみもあって始めたことだったが、どうやら飛影自身、行為自体も、蔵馬とそのような関係にあることも嫌いではならしい。
回を重ねるごとに飛影は、情事後の気怠い雰囲気をそのまま明け透けにするようになった。自分から言い出したこととはいえ、毎度毎度となると流石にいい気分のするものではない。
何より、本人は気づいていなようだが、飛影の全身から漂う蔵馬の妖気に時雨は言い知れぬ気分の悪さを感じていた。まるで、この身体は自分のものだと顕示するように。
 
「…んっ」
 
ツボを刺激されて、飛影の喉から漏れた甘い声に時雨は動きを止める。
 
経験として何度か男を抱いたことはあるが、日常的に男を抱く趣味はない。とはいえ、あの色好きな狐がこれに執着するのもわかる。飛影には男を惑わす不思議な色香があった。
 
時雨はリンパの流れに沿うように、耳裏から顎、首筋、脇腹、ももの付け根へと時折力を入れながら、白い肌に指を這わせる。
 
「ッ…はッ、ァ…」
 
痛みと快感。交互に、時に同時に襲ってくる感覚に、飛影は短く息を吐く。普段の仏頂面の飛影からは考えられない、おそらく閨でしか聞けないであろう艶を帯びた声。そして飛影の全身に纏わりつく淫奔な匂いに、否が応にも自身の体の中の雄が刺激される。
 
あの嫉妬深い男のことだ。このことが知れたらどんな報復を受けるかわかったものではない。いや、既に知っていて飛影を自由にあそばせているのかもしれない。計算高い奸狐の考えそうなことだ。知った上で、己が一線を超えるのを待っているのだろう。決定的な証拠を掴むのを。
 
「あの男は、御主が儂にこういうことをさせていると知っているのか。」
「さあな。」
 
飛影の返事はいつもと変わらず素っ気ない。
 
「あやつは御主を好いているのではないのか。」
 
時雨の問いに、飛影は押し黙る。
 
「…知られてもかまわん。」
 
暫くの沈黙の後、包帯の巻かれた腕に顎を乗せたまま、飛影がぼそりと呟く。
 
「あいつはいつも俺の体を好きなように弄んでくれているからな。これぐらいしたっていいだろう。」
「だが知られたら御主もただでは済むまい。」
 
報復を受けるのは自分だけではないだろう。むしろ、飛影の方が酷い仕置を受けるのは想像に容易い。
それとも、飛影自身も蔵馬にばれることを承知の上でここに来ているのだろうか。
時雨の問いに、飛影は再び沈黙した。
 
「…フン。あのムカつく薄ら笑いが嫉妬で歪むのならいい気味だ。」
 
飛影はそう吐き捨てると重ねた腕に顔を埋めた。
 
なるほど…
 
その一言に、時雨は飛影の本心を垣間見た。
 
なるほどこれは、嫉妬もしてくれない薄情な“恋人”への飛影なりの意趣返しなのだろう。だとすれば飛影の明け透けな態度にも合点がいく。
だがそれさえもあの男は見透かしているに違いない。全てを知った上で薄ら笑いを浮かべて自分達を傍観している様が目に浮かぶ。
そしてそれでも健気にあの男の気を引こうとしている飛影が憐れに思えた。
 
だとしても…
手早く体の鍼を抜きながら、時雨は思う。
痴話喧嘩のダシにされるなど迷惑な話だ。余計な揉め事に巻き込まれるのは御免だ。
 
時雨は鍼を抜いた肌を再びごつごつとした手で撫でる。ここに来た時にはガチガチに強張りきっていた筋肉は、随分と柔らかくなっていた。
体を綺麗に拭いてやり、飛影が着て来た
黒いマントを投げ掛けてやる。
 
「当て馬にするのなら、他をあたれ。儂は御主らにつきあっているほど暇ではない。」
 
少しうとうととしていた飛影は、時雨の言葉には応えず、のろのろと起き上がると、何も身につけていない素肌に直接黒いマントを羽織った。
 
「世話になったな。」
 
ぴょんと寝台から降りると、ブーツと服、剣を手に持ち、裸足のままぺたぺたとドアに向かって歩いていく。
 
その後ろ姿に、かつて見た姿が重なる。
邪眼を移植し、剣術を教えてやった後、自分のもとを出て行く日の後ろ姿。
自分ひとりで全てを背負い込んだ小さな背中。
もっと自由な生き方もいくらでもあるだろうに、敢えて自分を追い込み痛めつけ茨の道を歩む。自分は愛されてなどいないと、さっさと諦めてしまえば楽になるものを。
 
「飛影」
 
扉に手をかけようとした背中に声を掛ける。
 
「御主、今のままでいいのか。」
 
プライドの高い赤い瞳が肩越しに時雨を睨みつける。あの時と変わらない。誰にも縋らず誰にも屈することのない孤高の瞳。
 
「同じことを何度も言わせるな。余計な世話だ。」
「…そうか。まあ良い。辛くなったらまた来い。この程度の治療なら無償(ただ)でやってやろう」
 
その言葉に飛影の瞳がほんの少し見開かれたように見えたが、すぐにフンと鼻を鳴らして背を向けた。
 
「貴様に情けをかけられる覚えはない。礼は後で使い魔に持って来させる。」
 
乱暴に閉じられる扉。
時雨はそれを見送ると珍しく自嘲的な笑いを浮かべた。
 
やれやれ。儂も大概だな。
 
部屋の中には飛影の残り香がほんのりと漂っている。時雨は香炉に近づくと、再度強めに香草を焚いた。
 幽遠な香りがゆっくりと、妖艶な花の匂いを掻き消していった。


Fin.


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