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三つ目の探し物

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※蔵飛前提ですが、(ぬるいですが)時雨×飛影の表現があります。苦手な方はご注意ください。




ほぉ、驚いたな・・・

全魔界が注目する中、いよいよ開催されることになった魔界トーナメント。有象無象の妖怪でごった返すその予選会場で、ともすれば人混みに埋れてしまいそうな小柄なその妖怪の姿を認めて、時雨はしばし歩みを止めた。

横にいるのは、このトーナメント開催のきっかけとなった雷禅の息子か。
その人懐こい笑顔に話し掛けられて、いつものように無愛想を装いながら、楽しげに目を輝かせている様子に、初めて見る表情だな、と時雨は思う。


****


相手をしてやって欲しい奴がいると、躯に呼ばれ、そこにいた人物を見た時は、随分と驚いた。

本当に同一人物かと、一瞬疑った。
確かにあの時、妖力は赤子同然まで落ちたはずだった。
だが今目の前にいる妖怪は確かにS級。
まさか数年でここまで強くなるとは・・・。

だが、何よりも纏う雰囲気の違いに驚いた。


自分が手術を行うかどうかは、その者の人生に惹かれるかどうかで決める。
そして報酬としてその人生の一部を貰う。

人間にしろ妖怪にしろ、他人の人生ほど、好奇心をかきたてられてるものはない。それはどんな絵巻物にも勝って、意外性と驚きに満ちた極上の物語だ。
そして、そこに自分が手を加えたことにより、その者の人生が変わっていく様を見るのは、この上なく興味深い。

『氷河で生まれた忌み子』

その妖怪の人生は、たかだか生まれて10年足らずではあったが、充分時雨の好奇心をそそるものだった。

「二つの探し物を見つけるために、邪眼を移植したい。」

そう、ヤツは言った。

だが、本人も気づいていない、三つ目の探し物に、興味が湧いた。

それが何かもわからず、自分がそれを求めていることにすら気づいていないそれを、この幼い魔物が手に入れた時、どんな顔をするのか。

それが見たくて手術を引き受けた。
それどころか、赤子同然になったヤツに、剣術を教え、様々な生きるための術を教えてやった。

手術後神経が繋がるまでの間、他人の助けがなければ用を足す事さえ出来ないことに、痛みで目を潤ませながら、屈辱に満ちた表情で自分を睨んでいた顔を思い出す。

だが、「こいつは使える」と認識するや否や、手のひらを返したように態度を変え、従順で貪欲になった。
生きるためならなんだって利用してやると言わんばかりに、こちらが教え与えるものをすべて吸収していった。

そんな、なりふり構わず生きることに固執していたヤツがどういう風の吹きまわしか。

記憶の中の、迷い焦りながら、ただ自分の力だけに縋るように生き急いでいた、あの生意気で幼い妖怪の姿はもうそこにはなかった。

鋭い目つきと背格好こそ変わらないものの、目の前にいる邪眼師は、全身から溢れ出ていた殺気が消え、以前と比べものにならないほど強い妖気を纏いながら、その目には覇気がなく、生きることに諦観したような、そんな印象さえ受けた。

ふと、その首にかけた石に目が留まる。

「これは俺のじゃない」
「・・・ほう。すると妹のほうの石か。どちらにしても探し物のひとつは見つけたわけだ。」

にも関わらず、自分をまっすぐに見据える紅蓮の瞳には濃い絶望の色が滲む。

人が絶望する時というのは、何かを失った時だ。
探し物を見つけたが手に入れられなかったか。或いは手に入れて再び失ったか。

それもよかろう。絶望し、死にゆく姿もまた美しいものだ。

だがもし・・・
もし、ヤツがそれを再び手に入れることができたら、どんな顔をするのだろうか。

そんな迷いが一瞬の隙を生んだのかもしれない。
そうでなければ、あんな小僧と相討ちになどなるはずはなかった。


****


時雨は追憶から意識を戻すと、雑踏の向こうに見える当の妖怪を再度見やった。

自分と生死を懸けた決闘を繰り広げたその妖怪は、興奮した様子の裏飯幽助の隣で相変わらず仏頂面を装っている。
そこにもう一人、男が加わる。

あれが・・黄泉の参謀だった蔵馬か。

優々とした風貌の元妖狐が隣に立つと、また小さな妖怪の表情が変わる。

今まで全身から溢れていた闘気が消え、嬉しさと戸惑いが綯い交ぜになった目で、チラリと蔵馬を見遣る。
だがその微笑みを帯びた瞳と目が合いそうになると、いかにも居心地が悪そうに顔をわざと背けた。そのくせほんとのところは気になって仕方ないようで、裏飯と話す蔵馬の言葉に聞き耳を立てている。

「よお!おめーらも久しぶりだな!」

裏飯が嬉しそうに手を上げた視線の先から、また何人かの男が近づいてくる。
あれは、曼陀羅で蔵馬の子飼いだった者たちだ。

昔の戦友達とはしゃぐ裏飯をよそに、蔵馬が背けられた耳元に口を寄せ、何事かを囁く。

一瞬見開かれる赤い瞳。
動揺を隠すように、不機嫌な表情でひとことふたこと言い捨てる。

だが、背けられた顔にほんの僅かに赤みが差すのを、時雨は見ていた。
心なしか嬉しそうに、そして不安げに、ほんの少し歪められた口元。漂う視線。
蔵馬も気付いていない。
辛うじてわかるほどの些細な表情の変化。

その一部始終を時雨は雑踏の向こうからただ一人見ていた。

ほぉ・・・
あんな表情をヤツがするとはな・・・

なるほど、三つ目の探し物は見つかったようだな・・・

思わず口元に笑みが浮かぶ。

とその時、鋭い視線を感じて時雨は口角を戻すと視線の主を見た。
その先には、深い碧の瞳に静かに光を湛えて、元妖狐が自分を睨みつけていた。
喧騒を貫いて真っ直ぐに見据えてくるその目は、先ほどに隣に立つ妖怪に贈った眼差しとは全く別人のような、冷たく非情な目。

それは、欲しいものはどんな手段を以てしても手に入れ、邪魔なものは容赦なく排除する、
悪名名高い妖怪の目だった。

フンと鼻で笑うと、時雨は目線を外した。

これは面白くなりそうだ・・・

飛影よ。御主の探しものがどうなるか、見届けさせてもらおう。
だが、なかなかそいつは厄介だぞ。

まあ、御主に施した手術代分、楽しませてもらおう。

もう一度、今だこちらに気づかない未熟な邪眼師をチラリと見遣ると、口元に笑みを浮かべて、時雨は雑踏の中へと消えていった。


Fin.





時飛好きなジグザグ様に捧げます。
実はもうひとつ、もっとがっつり時雨×飛影なお話も書いたのですが、苦手な方も多そうなので、表のブログには載せていません。ここまで読んで頂いて、時飛もOK!と言う方のみこちらよりお読みください。裏あり。(別窓開きます。)


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